冬になると、なぜ人は話さなくなるのか
冬になると、「最近あまり人と話していないな」と感じる方は少なくありません。これは性格や年齢の問題ではなく、冬という季節そのものが持つ特徴によるものです。
寒くなると、まず外に出る回数が減ります。「寒いから今日はやめておこう」「また今度にしよう」そうした小さな判断が積み重なり、買い物や散歩、知人との立ち話の機会が自然と少なくなっていきます。特に冬は日が短く、暗くなるのも早いため、外出を控えやすい季節です。
さらに、厚着をすると体の動きが鈍くなり、移動そのものが億劫になります。転びやすさへの不安や、体力への気遣いも加わり、「出かけない理由」が増えていきます。こうして気づかないうちに、人と顔を合わせる機会が減り、会話も減っていくのです。
もう一つ大きな理由があります。
それは、冬になると家の中で過ごす時間が増え、会話の代わりにテレビを見る時間が長くなることです。
テレビは音も映像もあり、誰かと一緒にいるような感覚になります。そのため、「今日は誰とも話していない」という自覚が生まれにくくなります。
しかし実際には、テレビは一方的に情報が流れてくるだけで、こちらから言葉を発する必要はありません。
返事をしたり、考えたり、相手の反応を読むこともありません。その結果、気づかないうちに“声を出して話す時間”が減っていくのです。
冬に会話が減るのは、怠けているからでも、年齢のせいでもありません。誰にでも起こりうる、季節による自然な変化です。
だからこそ、「話さなくなっているかもしれない」と気づくことが、何より大切なのです。
会話が減ると、脳では何が起きているのか
人と話すことは、実は脳にとってとても複雑で大切な働きです。
会話をするとき、脳は同時にいくつもの作業をしています。何を話すかを考え、相手の言葉を理解し、どう返すかを判断し、声や表情を調整する。この一連の動きは、記憶・判断・感情・運動を同時に使う、高度な脳活動です。
ところが会話の回数が減ると、こうした脳の働きが一気に使われなくなります。
特に「考えて言葉を選ぶ」「相手の反応を見て修正する」といった部分は、使わなければ自然と鈍くなっていきます。
これは年齢の問題ではなく、使う機会が減ったことによる変化です。
よく「最近、言葉がすぐに出てこない」「話すのが少し面倒に感じる」と言われますが、それは能力が落ちたというより、脳がその動きを忘れかけている状態に近いのです。
脳は筋肉とよく似ています。使えば保たれ、使わなければ静かに衰えていく。会話が減るというのは、脳の一部を長期間休ませているのと同じことなのです。だからこそ、たくさん話す必要はありません。短い会話でも、声を出し、考え、反応すること自体が、脳を目覚めさせる大切な刺激になります。
テレビ中心の生活が不安を増やす理由
冬になると、家の中で過ごす時間が増え、テレビをつけている時間も自然と長くなります。
テレビは音があり、映像があり、部屋の静けさを埋めてくれる存在です。一人でいても寂しさを感じにくく、安心する方も多いでしょう。
ただ、先ほども書いた通り、テレビの情報は基本的に一方通行です。こちらが考えなくても、次々と内容が流れてきます。
返事をする必要もなく、判断を求められることもありません。若い子がスマートフォンで、SNSをずっと見ているのと違いはありません。 そのため脳は、「受け取る」ことはしていても、「考える」「選ぶ」「決める」といった働きをあまり使わなくなります。
さらに、テレビで流れる情報の多くは、事件、事故、災害、病気など、注意や警戒を促す内容です。これらは必要な情報ではありますが、見続けることで脳は常に不安や緊張の状態に置かれます。この状態が続くと、脳は落ち着いて考えるよりも、「何か起きるかもしれない」と構えることを優先するようになります。
すると判断力が鈍り、新しいことを覚えにくくなり、会話や外出がさらに億劫になります。
テレビが悪いわけではありません。問題は、テレビだけが情報や刺激の中心になってしまうことです。考えたり、話したりする機会が減った状態で不安な情報だけを受け続けると、心も脳も疲れてしまうのです。
不安が続くと、判断力は静かに衰えていく
人の脳は、不安を感じると「身を守ること」を最優先にします。これは本来、危険から逃げるための大切な働きです。ところが、その不安が長く続くと、脳は常に緊張した状態になり、落ち着いて考える余裕を失っていきます。
不安な状態では、「どうするかを考える」「いくつかの選択肢を比べる」といった判断が面倒になります。すると脳は、できるだけ考えなくて済むように行動を減らそうとします。外出を控え、会話を避け、決断を先送りにする。
これは怠けているのではなく、脳が疲れて省エネモードに入っている状態です。
この状態が続くと、「迷わない」「選ばない」「決めない」生活が当たり前になります。判断の機会が減るということは、判断に使う脳の働きも使われなくなるということです。
そして静かに起きるのが、判断力の低下です。 記憶力よりも先に、「考える力」「選ぶ力」が弱くなっていきます。本人は気づきにくく、周囲からも見えにくいため、変化はゆっくり進みます。
認知症は「突然」ではなく、生活の積み重ねで進んでいく
認知症という言葉を聞くと、多くの方が「ある日突然、記憶がなくなる病気」そんなイメージを持たれがちです。
しかし実際には、認知機能の低下はもっと静かに、長い時間をかけて進んでいくことがほとんどです。
最初に変化が出やすいのは、物忘れよりも判断や選択の力です。
何をするか決めるのが億劫になる。迷うのが面倒になる。新しいことを避けるようになる。
こうした変化は、「年のせい」「疲れているだけ」と見過ごされやすいものです。
けれど実は、これは脳の使い方が偏ってきているサインでもあります。判断しない、選ばない、会話をしない生活が続くと、
その働きを担う脳の部分は、少しずつ使われなくなっていきます。
認知症は、突然始まるものではありません。「考えなくても済む生活」が、知らないうちに積み重なった結果として進んでいくものです。
だからこそ、冬は特に注意が必要です。外に出ず、会話が減り、不安な情報ばかりを受け取る生活は、脳が“冬眠状態”に入りやすい環境をつくってしまいます。ですが、ここで大切なのは希望です。脳は、使えば目を覚まします。今からでも、生活の中で脳を動かす習慣を取り戻すことは十分に可能です。
今日からできる、脳を起こす小さな習慣
脳を元気に保つために、特別な訓練や難しいことをする必要はありません。大切なのは、脳を毎日少しずつ使うことです。
まず意識してほしいのは、「声を出して話す」こと。長い会話でなくても構いません。挨拶、天気の話、ちょっとした近況。
内容よりも、考えて言葉を選び、声に出すこと自体が脳への良い刺激になります。
次に大切なのは、「自分で決める場面をつくる」ことです。今日は何を着るか、何を食べるか、どこへ行くか。小さな選択でも、判断する回数が増えるほど、脳は目を覚まします。
テレビについても、無理に減らす必要はありません。ただし、「テレビだけ」にならないように意識してみてください。
見ながら感想を口に出す、誰かに話題として伝える。それだけで、受け身の時間が、考える時間に変わります。
そして、外に出るきっかけを一つ持つこと。散歩でも、用事でも、人に会う約束でも構いません。人と関わる場に身を置くことは、自然に会話と判断を生み出します。脳は年齢よりも、「使い方」に大きく左右されます。少し話す、少し考える、少し決める。この小さな積み重ねが、冬の間に脳を冬眠させないための、いちばん確かな方法です。
箕面市老人クラブの活動は、自然に脳が動く場所
こうした「脳を起こす習慣」を、無理なく続けられる場所があります。
それが、箕面市老人クラブで行われている、さまざまな活動です。
老人クラブの行事は、特別な「脳トレ」を意識していなくても、自然と脳を使う場面が多くあります。
人と顔を合わせて挨拶をし、話を聞き、言葉を選んで返す。次に何をするかを考え、場の流れに合わせて動く。これらはすべて、脳にとってとても良い刺激になります。
大切なのは、「頑張ること」ではなく、「関わること」。一人で家にいる時間が増えがちな冬だからこそ、人と同じ空間で過ごし、声を出し、笑う時間が、心と脳の両方を元気にしてくれます。
何かを学ばなければならない場所ではありません。気軽に参加し、会話を楽しむだけで、気づかないうちに、考える力や判断力が使われています。
冬は体だけでなく、脳も動かしにくくなる季節です。だからこそ、家の中だけで完結させず、人とつながる場所を上手に使うことが、これからの元気につながっていきます。

老人クラブに入ると、おしゃべりがとっても大好きな人、
人のお世話をするのがとっても大好きな人、そんなあたたかい方たちがたくさんいます。
特別なことをしなくても、話して、笑って、誰かと時間を共有するだけで、気づかないうちに心も脳も元気になります。
「最近あまり人と話していないな」そう感じたら、それは良いきっかけかもしれません。
ぜひ一度、気軽な気持ちで参加してみてくださいね。
新しい出会いと、楽しい会話が、きっと待っています。

