良い年末年始にする為に食の事故に注意
年末年始になると、毎年のように耳にするのが「お餅を喉に詰まらせた」というニュースです。
お正月の風物詩とも言えるお餅ですが、実はシニア世代にとっては、特に注意が必要な食べ物でもあります。
「昔から食べているから大丈夫」「去年も問題なかったから平気」
そう思われる方も多いかもしれません。しかし、年齢とともに体の状態は少しずつ変化しており、その変化が思わぬ事故につながることがあるのです。
まず大きな理由として挙げられるのが、噛む力や飲み込む力の低下です。年齢を重ねると、歯が減ったり、入れ歯によって噛みにくくなったりします。また、舌や喉の筋力も若い頃と比べると弱くなります。その結果、十分に噛み切れないまま飲み込んでしまい、喉の奥でお餅が詰まってしまうことが起こりやすくなります。
さらに、唾液の分泌量が減ることも見逃せません。唾液には、食べ物を滑らかにし、飲み込みやすくする役割があります。唾液が少なくなると、お餅が乾いた状態で喉に貼り付き、非常に取れにくくなってしまいます。
これが、お餅の事故が重症化しやすい理由のひとつです。
加えて、お餅そのものの性質も危険性を高めています。お餅は粘着力が非常に強く、温かいとよく伸び、冷えると固くなります。そのため、喉に入った瞬間に気道を塞ぎやすく、一度詰まると外れにくいという特徴があります。
パンやご飯と違い、少量でも命に関わる危険がある食べ物だと言えるでしょう。
もうひとつ大切なのが、「自分は大丈夫」という油断です。長年食べ慣れていることや、家族に心配をかけたくないという気持ちから、注意を払わずに食べてしまうケースは少なくありません。しかし、実際にはこの油断こそが、事故を引き起こす最大の要因になることもあります。
では、お餅の事故は防ぐことができないのでしょうか。答えは「予防できます」です。
お餅の事故は予防できる?
少しの工夫で「危険」は「安心」に変えられる
お餅の事故は日常のちょっとした工夫で、十分に予防することができます。特別な道具や難しい知識が必要なわけではありません。大切なのは、「お餅は若い頃と同じ感覚で食べるものではない」と理解することです。
まず意識したいのは、お餅の大きさと形です。昔ながらの大きなお餅をそのまま口に入れることは、シニアにとって非常に危険です。噛み切れる大きさに小さくしたり、薄く切ったりすることで、喉に詰まるリスクは大きく下がります。特に「ひと口で無理なく噛み切れるかどうか」を基準にすることが重要です。これは見た目の問題ではなく、安全のための工夫だと考えてください。
次に大切なのが、食べる前の準備です。お餅を口にする前に、お茶や味噌汁、お吸い物などで喉をしっかり潤しておくことは、非常に効果があります。唾液が少なくなりがちなシニアにとって、水分は飲み込みを助ける大切な役割を果たします。乾いた状態でお餅を食べることは、詰まりやすさを一気に高めてしまいます。
食べ方にも注意が必要です。お正月はテレビを見ながら、会話をしながら、つい食事がおろそかになりがちですが、こうした「ながら食べ」は事故の原因になります。
お餅を食べるときは、できるだけ食べることに集中し、一口ごとによく噛むことを意識しましょう。
噛む回数を増やすことで、お餅は細かくなり、喉を安全に通りやすくなります。ゆっくり食べること自体が、最大の予防策と言っても過言ではありません。
最近では、高齢者向けに開発された「喉に詰まりにくいお餅」や、嚥下に配慮した商品も増えています。こうした商品は、昔ながらのお餅と比べて粘着力が抑えられており、万が一のリスクを下げてくれます。「伝統だから」「昔からこうしてきたから」とこだわるよりも、「今年も安全に食べられるかどうか」を基準に選ぶことが、これからの時代のお正月の過ごし方なのかもしれません。
そして、何より大切なのは、「無理をしない」という判断です。噛む力が落ちてきた、最近むせやすくなった、以前にヒヤッとした経験がある場合には、お餅をそのまま食べることにこだわる必要はありません。ぜんざい風にして柔らかくしたり、お餅に似た食感の代替食品を選んだりすることは、決して妥協ではなく、命を守るための賢い選択です。
家族が集まるお正月だからこそ、「気をつけようね」と声をかけ合える雰囲気も大切です。注意することは、心配しすぎでも、失礼でもありません。安心して一緒に新年を迎えたいという、思いやりの表れです。
お餅は、正しく向き合えば、これからもお正月の楽しみであり続けます。
少しの工夫と意識で、今年のお正月を「危険」ではなく「安心」に変えていきましょう。

